ANCA関連血管炎の概要

ANCA関連血管炎の概要

血管炎の分類とANCA関連血管炎

  • 血管炎は血管壁の炎症として定義される。この中には、血管炎そのものを主病変とする独立した疾患(原発性血管炎)と、他疾患に血管炎を伴う病態(続発性血管炎)が含まれる。
  • 原発性血管炎は罹患血管のサイズから大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎に分類される(表1)。
  • 大型血管炎は、大動脈および四肢・頭頸部に向かう最大級の分枝の血管炎で、高安動脈炎と側頭動脈炎が含まれる。
  • 中型血管炎は各臓器に向かう主要動脈とその分枝の血管炎で、結節性多発動脈炎と川崎病が含まれるが、バージャー病もこの範疇に入る。
  • 小型血管炎は細動脈、毛細血管・細静脈の血管炎で、ときに小動脈も傷害の対象となり、免疫複合体の関与するものと関与しないもの(pauci-immune)とに大別される。
  • 免疫複合体の関与する小型血管炎には、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病と本態性クリオグロブリン血症が含まれる。続発性血管炎の悪性関節リウマチもこの範疇に入る。
  • 免疫複合体の関与しない小型血管炎の中に、顕微鏡的多発血管炎(micorscopic polyangiitis: MPA)、ウェゲナー肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症 granulomatosis with polyangiitis:GPAへの呼称変更が提唱されている:GPA/WG)、チャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome: CSS)[アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis: AGA)とも呼ばれる]の3疾患がある。これらは抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)という共通の疾患標識抗体に基づきANCA関連血管炎(ANCA-associated vasculitis: AAV)と総称される。
  • ANCA関連血管炎には、全身性に血管炎をきたす全身型と、限られた臓器にのみ発症する臓器限局型がある(表2)。
  • 全身型には、MPA、GPA/WG、CSSの3疾患が含まれる。MPAは腎に好発する壊死性血管炎であるが、他の2疾患と異なり肉芽腫をきたすことはない。GPA/WGは壊死性血管炎に加えて肉芽腫を認めるが、CSSと異なり気管支喘息を伴わない。CSSは気管支喘息が先行し、好酸球増多に続き肉芽腫性血管炎をきたす。
  • 臓器限局型には、腎にのみ血管炎を発症する病型として壊死性半月体形成性糸球体腎炎が知られ、腎限局型血管炎(renal-limited vasculitis:RLV)と呼ばれる。
表1 罹患血管のサイズに基づく原発性血管炎の分類
分類 罹患血管 血管炎
大型血管炎 大動脈とその主要分枝 高安動脈炎
側頭動脈炎
中型血管炎 各臓器に向かう主要動脈とその分枝 バージャー病
結節性多発動脈炎
川崎病
小型血管炎 細動脈・毛細血管・細静脈
時に小動脈
ANCA関連血管炎
 ・顕微鏡的多発血管炎(MPA)
 ・多発血管炎性肉芽腫症(GPA/WG)
 ・チャーグ・ストラウス症候群(CSS)/AGA
免疫複合体性血管炎
 ・ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
 ・本態性クリオグロブリン血症
 ・悪性関節リウマチ*
下線の6疾患は厚生労働省特定疾患治療研究対象疾患である.結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎は2005年度までは「結節性動脈周囲炎」として一括して登録されていたが,2006年度より個別に登録されている。
*続発性血管炎であるが、特定疾患であるので、この表に掲載した。
表2 ANCA関連血管炎
分類 疾患 特徴
全身型 顕微鏡的多発血管炎
(MPA)
小血管(毛細血管,細静脈,細動脈)の壊死性血管炎で免疫複合体の沈着を認めない.小~中動脈の動脈炎を伴うこともある.壊死性糸球体腎炎の頻度が非常に高く,しばしば肺毛細血管炎を伴う
多発血管炎性肉芽腫症
(GPA/WG)
気道の肉芽腫性炎症と小~中血管(毛細血管,細静脈,細動脈,小動脈)の壊死性血管炎。通常,壊死性糸球体腎炎を伴う
チャーグ・ストラウス症候群
(CSS/AGA)
好酸球浸潤を伴う気道の肉芽腫性炎症.小~中血管の壊死性血管炎.気管支喘息や好酸球増多症を伴う
臓器限局型 腎限局型血管炎
(RLV)
MPAの腎限局型.壊死性半月体形成性糸球体腎炎で,免疫複合体の沈着を認めない

血管炎の病因とANCA

  • 血管傷害を惹起する機序としては、液性免疫の関与するもの、細胞性免疫の関与するもの、その他がある。
  • 液性免疫の異常としては、ANCAによる好中球の活性化、免疫複合体沈着によるIII型アレルギーを介した組織傷害、抗内皮細胞抗体(anti-endothelial cell antibody)、抗リン脂質抗体(anti-phospholipid antibody)を介するものがある。

ANCAの測定

〈意義〉
  • ANCAの測定は、ANCA関連血管炎の早期診断及び疾患活動性の指標、再燃予知の指標として有用である。また、ANCAは急速進行性糸球体腎炎の鑑別のためにも測定される。
〈測定法〉
  • ANCAの測定法には、間接蛍光抗体法(IIF)および抗原特異的酵素抗体法(ELISA)の2種類がある。
  • IIFでは、染色パターンにより好中球の核周囲が染まる核周囲型(perinuclear ANCA: P-ANCA)と細胞質がびまん性顆粒状に染まる細胞質型(cytoplasmic ANCA: C-ANCA)とに分類される。
  • ELISAでは、P-ANCA対応抗原としてのミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase: MPO)とC-ANCA対応抗原としてのプロテイナーゼ3(proteinase 3: PR3)を用いて各抗原に特異的な抗体が測定され、各々MPO-ANCA、PR3-ANCAと呼ばれる。
〈留意点〉
  • わが国ではANCAの測定にELISAが主に使用されている。しかし、ELISAには①抗原エピトープ認識部位がキットによって異なる、②基準単位、測定範囲がキットによって異なるなどの問題もある。したがって、異なるキットによる測定結果の絶対値を直接比較することはできないことを認識しておく必要がある。
  • IIFはMPO-ANCAやPR3-ANCA以外のANCAを同定できる。特にELISAキットでのANCA陰性例に有用である。
  • 血管炎を疑った場合は、ELISAとIIFの両方法で測定することが薦められる。
     ※『ANCA関連血管炎の診断』の項も参照。

日本におけるANCA関連血管炎の疫学

 厚生労働省特定疾患(治療研究対象疾患)に指定された血管炎症候群の患者数の推移を図1に示す。ANCA関連血管炎ではMPAとGPA/WGが対象になっているが、MPA は2005年度まで結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa: PAN)と共に結節性多発動脈周囲炎(PN)として登録されており(2006年からは個別に登録)、MPAとPAN の正確な患者数は不明である。しかし、1990年代の調査などから図1のMPA+PAN の患者数の大半はMPA であると推定される。
 MPA+PAN はこの15年間で3.5倍、GPA/WGは2.5倍増加している。CSS/AGAは治療研究対象疾患ではないため同様の統計はないが、年間の患者数は100人、医療施設受給者数は1800人と推定されている。
 わが国では、ANCA関連血管炎の中ではMPAがGPA/WGよりも患者数が約3倍以上あり、最も多い。一方、欧米では逆にGPA/WGがMPA患者より頻度が高く、国内外での疫学的な差異が存在する。このようにわが国の血管炎患者の疫学や病態は欧米と大きく異なっており、それがわが国独自のガイドラインを求められてきた背景となっている。
図1 受給者証交付件数からみた血管炎患者数の15年間の推移(1996~2010)
厚生労働省特定疾患(治療研究対象疾患)に指定された血管炎の患者数の1996~2010年の推移を受給者証交付件数で示した。わが国で多い血管炎はBuerger病、高安動脈炎、悪性関節リウマチ、MPA+PANである。2009年まで最も多かったBuerger病はこの15年間で10,277人から7,147人に減少した。高安動脈炎は4,897人から5,438人、悪性関節リウマチは5,019人から5,891人と微増している。一方、MPA+PANとGPA/WGは年々増加の一途をたどり、MPA+PANはこの15年間で2,204人から7,600人と3.5倍の増加を示し、2010年には第1位になっている。またGPA/WG患者数も660人から1,671人と2.5倍の増加を示している。なお、MPA+PANの患者数の大半はMPA患者であると推定される。
(難病情報センター・特定疾患医療受給者証交付件数より引用)
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